第4章 "雪螢"
.。o○物語
……嘘。
……嘘、嘘、嘘、嘘、嘘っっ!!!
雪女は足を必死に動かしました。
体が回りの体温につられるように溶けていく感覚。
けれど気にする暇など雪女にはありません。
あの立て札には続きがあったのです。
______________いや。
尚、立ち入ったものを斬首にする。
「----さんッッッ!!!!!」
人混みのなかを掻き分けて進みました。
多分指先が溶けてきていると分かっていましたが、そんなことを気にしてる暇など雪女にはありません。
そうしてやっと、人混みの一番前にたどり着きました。
息を整えながら目の前の風景を見つめました。
じわりと雪女の瞳に膜が張り、溢れます。
「あ、ぁ……ぁあっ…。」
酷いわねぇ。
何でも屋敷に監視されていてそれで逃げ出そうとしたらしいわよ。
でも雪山に通っていて閉じ込められていたのよね?
雪女に洗脳されたらしくて、監視していたらしいわ。また会いに行かないように。
それで逃げ出して、重罪だと判断されて殺されたのね。
それにしても酷いわ……こんな風に首と体を離さなくても……。
生臭い臭いが雪女を包みます。
耳から入ってくるのは、彼の最期の理由です。
私のせい?
涙があとからあとから溢れて止まりません。
私のせいなの?
私のせいで貴方は死んでしまったのですか?
ゆっくり、ゆっくり、彼に近づきましたが、柵に阻まれてしまいます。
貴方の体を最後まで抱き締められない。
暖かさは感じることなど出来やしない。
雪女は膝を地面につきました。
このまま一緒に貴方と共に……。
ポタリポタリと溶けていきます。
指先は既に存在せず、もう数十分すれば溶けてしまうでしょう。
雪女は自分が溶ける温度くらいわかっていましたから。
貴方のことが好きでした。
この世で一番愛していました。
静かに、目を閉じました。
言えなかった想い。
それはしこりのように雪女の心に残りました。
一緒に逝こう……。
そう覚悟を決めた________その時でした。