第4章 "雪螢"
.。o○物語
ある日、若者は突然来なくなりました。
花びらを持ってきてくれると、約束したのに。
どうしたのだろう。
私はなにかしてしまっただろうか。
不安に駆られたまま、どうすることも出来ませんでした。
何日も何日も、雪女は待ち続けました。
もしかしたら、全く違うところで遭難しているかもしれない。
辺りを歩けなくなるまで探しました。
それでも若者は見当たりません。
どうしたのだろう?
何かあったのだろうか?
忙しいのだろうか?
疑問ばかりが募り、寂しさが心を支配して、夜中に何度も若者の声を聞いた気がして目が覚めました。
……捨てられてしまったのだろうか?
一ヶ月後、見詰めたくない現実が頭をよぎりました。そんなはずないがないと、言い切れなくなったのです。
螢は寂しいです……-----さん……。
白い肌に一筋の涙が伝いました。
一人は慣れていました。
もとの生活に戻っただけでした。
それでも、一度知ってしまった暖かさは忘れることなど雪女には出来ませんでした。
……たぃ……。
_______________……会いたいっ……。
けれど既に時は五月に入ろうとしていました。さすがにこの雪山を降りたら溶けてしまうかもしれません。
……それでも構わない。
もう愛していないのなら、それで構わない、
けれど…………。
…………__________一目でいいから会いたい。
会ったら溶けて消えても構わない。
雪女はせめて外見だけを人間に合わせるようにひとつに髪をくくり、白い着物を脱いで、ひとつだけあった紺色の着物に袖を通しました。
それからは必死に走りながら、村を目指しました。息を切らしながら、山の麓にまで降りました。
__________……そこで、雪女は見てしまったのです。
一本の立て札を。
この雪山、山頂。
雪女現れる、この先立ち入ること禁ずる。
「_______________え……?」