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【黒バス】今夜もアイシテル

第42章 ファウル



コワレモノのように抱きしめられて、ドキドキと早鐘を打つ鼓動。

目の前の視界を埋めつくす濡れた身体に、結はそっと額を押し当てた。

(ほんと……ズルい)

筋肉が盛り上がった幅の広い肩と、くっきりと浮かぶ鎖骨。

ベッドの上でしなやかに、そして追いつめるように律動する逞しい胸は、鋼のように引き締まっているのに目がくらむほど艶っぽい。

「だから……嫌だったんです。海もプールも」

少し伸びた髪が張りつく顔は、今日も嫌味なほど格好いい。

まさに水も滴る……状態だ。

「泳げないから?」

「だから泳げますって!」

「十メートル、ね」とこぼれる笑顔から、結はフイっと顔を逸らせた。

均整の取れた身体と、誰もが目を奪われるルックスを兼ね備えた恋人は、どこに行っても注目の的。

制服姿でさえ人目を引く彼のこんな姿を、誰にも見せたくない──そんな事をつい考えてしまう自分に少しの自己嫌悪。

「もしかして、水着の撮影とかもあったりするんですか?」

「ん〜?そーいうのはないっスね。オレ、一応さわやか路線なんで」

これからも、贅沢すぎる悩みの種は尽きることはないのだろう。

浮き輪を挟んだまま、ふたりで静かな空間を漂いながら「もしかしてヤキモチっスか?」と耳に落ちるイタズラな声に、結は「そうかも……」とつぶやいていた。

「ちょ、ちょっと!ここは『違います』と可愛く拗ねる場面じゃないんスか!」

意味不明の言動が可笑しくて、結はぎゅうぎゅうと抱きしめてくる腕の中で小さく笑った。

「あーもー、可愛すぎて撃沈……」

「あ、やだ!潜らないでください!」

泡とともにブクブクと沈んでいく金髪にクレームをつけながら、結は水着姿を見られないように両腕で身体を隠した。

だが、水面に浮き上がる気泡が小さくなり、ぱたりと途絶えた後も、一向に黄瀬は姿を現さない。

「子供みたいなイタズラ、やめて……ください」

急に温度を下げた水に身体の芯を凍らせながら、「じょ、冗談です……よね?」と水に顔をつけた結は、水底に沈む身体に目を見開いた。

ゆらゆらと水にたなびく金髪と、光の反射を受けて青白くひかる肌。

あわてて浮き輪を手放すと、長い手足を投げ出して漂う黄瀬の身体に、結は無我夢中で縋りついた。




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