第25章 ヒート
「っ、結……」
「ん……」
「ハッ、だいじょーぶ?」
火照るカラダを抱きしめると、黄瀬はやわらかな頬を濡らす涙に指を滑らせた。
(んなわけないか……)
我を忘れるほどのめり込んだ濃厚なセックス。
太い首筋を伝う汗と、まだ激しく隆起する背中の筋肉が、それを如実に物語っている。
だが、それ以上に息を乱す恋人の髪を、黄瀬は指先で優しく整えた。
(あんな無茶なセックス、オンナのコの方が負担がデカいって分かってんのに……)
全身の熱をすべて使い果たした後に訪れる、気怠い脱力感。
それを大きく上回る幸せな気持ちを、果たして共有できただろうか。
「ホントにごめん。身体キツいっしょ?」
「う、うん。今、すごく幸せ……」
大好き、とつぶやきながら胸にすりよってくる恋人に、泣きたくなるほどの愛しさを噛みしめる。
「オレも……」
言葉を詰まらせながら、ふと感じる小さな違和感に、黄瀬は眉を顰めた。
短い間隔で息をするたび、上下する華奢な肩に感じる熱は、情事の名残だけではない気がする。
「……結?」
そっと頬を包みこんで顔を上げさせると、ゆっくりと開いた瞳は赤みを帯びて潤んでいた。
「なんか、いつもより体温高くないっスか?」
「ん……ちょっと熱、出ちゃったかも」
「へ?」
「ゴメン、ナサイ……」
「ちょ、なんで結が謝るんスか!?いや、今はんなコト言ってる場合じゃ!」
ベッドから飛び起きた黄瀬は、全裸であることもお構いなしに、自分のカバンの中を物色してタオルを手に取った。
「あ!あと着替え……結!着替えはどこに入ってんの!?ここっスか!?」
「え……っ、あ!」
適当に開けた引き出しに整然と並んでいる、色は控えめだが清楚で可愛い下着達に、黄瀬は今の状況も忘れて歓喜の声をあげた。
「お、おおぉーー……っ」
「も、涼太のバカっ!」
「イデっ!!」
投げられた枕が、だらしなく目尻を下げるイケメンの後頭部に、見事にヒットした。