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科学班の恋【D.Gray-man】

第80章 再生の道へ



✣ ✣ ✣ ✣



「婦長の最後の笑顔、オレ初めて見たさー」

「僕もです」

「そう?私は見たことあるわ。時々」

「ええ、私も。婦長さん、普段は厳しいけど根はとても優しい人だと思うの」

「…婦長のその優しさって、女子限定なんじゃねーの?もしかして」

「…僕もそんな気がします…」

「そんなことないぞ?婦長は皆平等に優しさを向けてる」

「そりゃマリにはわかるかもしんねぇけどさぁ…オレらには難解さ、婦長の優しさは」

「それ、同感です」



婦長に見送られ医療病棟を後にした南は、雑談を交えるエクソシスト組一同と自室へと向かった。
律儀にアレンとの約束を守るリナリーに、その手を引いて貰いながら。



(本当子供扱いされてる気分…)



同じ科学班の誰かに見られようものなら恥ずかしいが、生憎この時間帯は科学班は研究室以外にはいない。
見えてきた自室のドアにほっとしながら、同時にその側に立つ高い背丈を見つけた。



「あれ…神田?」



南の部屋のドアのすぐ横。
壁に背中を預けて腕組みをしたまま、ぴくりとも動かず静かに佇んでいたのは長い黒髪の印象残る顔。
神田だった。



「あ。来ましたよ神田先輩っ」



其処へひょこっと間に顔を覗かせたのは、満面の笑みをそばかすの乗った顔に浮かべたチャオジー。



「神田にチャオジー?どうしたの」

「南さんの退院が今日だって先輩から聞いて、ついて来たんス。退院おめでとうございますっス!」

「偶々だ。早朝トレーニングの帰り道に通りかかって思い出した」


「へー…」

「ふーん…」

「ほー…」


「んだよその顔。うぜぇ」



にこにこと体全体で喜び祝うチャオジーとは正反対に、表情一つ変えずに淡々と冷たく言い切る神田。
そこへ白々しく目を向けるアレンとリナリーとラビの目に、ぴきりと彼の額に青筋が浮かぶ。



「ま、まぁまぁ。それでも嬉しいよ。顔見に来てくれたの?ありがとう」

「…六幻の為だ。お前の為じゃない」

「うん。わかってる」



騒動となる前にと、間に入った南が笑顔で神田を宥める。
すると額の青筋は消えたものの、未だに素っ気ない態度のまま。
それでも神田にすれば充分な行為だと、南は頬を緩めた。

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