第80章 再生の道へ
科学班やエクソシストだけではない。
警護班も管理班も、教団で働いている全ての団員は彼女にとって平等な仲間なのだろう。
深々とアレン達に向かって溜息をつく婦長を前にして、ふと南の口元に笑みが綻ぶ。
「…ありがとうございます、婦長さん」
ぎゅっと薬用ケースを両手で握りしめて胸に抱く。
「お世話になりました」
深々とそのまま頭を下げる南に、ふと。
婦長の目元もまた和らいだ。
「…ええ、本当。世話の掛かる患者だったわ」
私にしか看られないわね、と呟く婦長の声は優しい。
顔を上げた南の目に映ったのは、厳しい目をしたいつもの婦長ではなかった。
鋭い目元を緩め、口角の端を少しだけ横に広げる。
「退院おめでとう。体を大切にね」
それはまるで、母のような優しさを含んだ微笑みのように見えた。