第80章 再生の道へ
一通り南の体を確認した後、ふぅと息をつきながらリーバーの体が離れる。
背中に回されていた腕が離れる感覚に、内心ほっと南は息をついた。
「悪いな、ジョニーのゴーレムが」
「…それを言うなら班長も、です。こんなに沢山の書類を山積みになんてしたら、雪崩もおきます」
「…それは…その……悪かった」
肩を落としつつ、ぽそりと駄目出しをする南の言葉は正論。
後頭部をぽりぽりと掻きながら、リーバーは力なく苦笑した。
そんな上司に複雑な感情を抱きつつ、南は周りに散乱してしまった書類を見渡した。
(こんな机まで部屋に置いちゃうから駄目なんだろうな…)
すぐ真横にある製図台の脚立を見て、肩が再び下がる。
仕事専用の机など置いてしまえば、リーバーならそこで仕事に埋もれてしまうのは必然。
書類より何より、この製図台を片付けることが大事なのかもしれない。
「…?」
そう、床に座り込んだまま見ていた製図台の脚立。
よくよく見れば、そこには沢山の傷痕が付いていた。
仕事の最中に傷でも付けてしまったのか、カッターかナイフかで切り込みを入れたような跡。
しかし偶然にしては、切り込み跡は細かく丁寧に刻まれている。
「南はソファに戻ってろ。俺がここを片付けるから───」
「あの、リーバー班長」
「ん?なんだ」
「この切り込みってなんですか?沢山付いてるけど…」
不思議に思って指差しながら問いかければ、またもや苦笑混じりな反応をされるかと思っていたが。
南の目に映ったリーバーの反応は違った。
「…あー…ああ…いや…」
同じく刻まれた無数の跡を見て、リーバーの表情がぎこちなく止まる。
一瞬の沈黙。
それから、再び苦笑混じりな表情が返ってきた。
一瞬だったが、その表情は普段のリーバーには見られないもので、よく彼の顔を伺ってきた南だからこそ気付いたこと。
それはいつもの彼らしくない反応だった。