第80章 再生の道へ
「だ、大丈夫、です…」
「本当か?体痛まないか?悪い、乱暴に扱って」
「いえ、そんなことは…っ」
(大丈夫です、大丈夫ですから…ッこの腕離して貰えませんか…!)
ふるふると首を横に振る南を、心配そうに見続けるリーバーはどうにも抱き締めた腕を離す気配がない。
近過ぎる距離に、彼の薄いグレーの瞳に映った自分の顔が見える程。
ぎしりと体を固まらせる南とは裏腹に、リーバーは不安そうに抱き締めた体の様子を伺っていた。
そして大きく肩を落とすと、天井で未だにぴょんぴょんと飛び続けているジョニーのゴーレムを恨めしそうに見上げる。
「ったく…今度見舞いに行ったら、あのゴーレムの正しい停止の仕方をジョニーに聞いておかないとな」
「………」
何気なく発せられたリーバーの言葉に、南はふとそれに気付いてしまった。
先程はゴーレムへの興味が先立って聞き流していたが、どうやらリーバーはジョニーの元へは何度も訪れていたらしい。
(お見舞い…忙しくて、行けてなかった訳じゃないんだ…)
ジョニーの元へ顔を出していたのならば、他の部下達の元へも見舞いに行っていただろう。
部下を贔屓することなどないリーバーだから、自然と確信できた。
しかし南の元へは一度も訪れなかった。
それが男性病棟と女性病棟の違いだからだとは思えない。
「………」
何故自分の元へは来てくれなかったのか。
理由はわからなかったが、少しだけ胸が締め付けられるような感覚を南は感じた。
「どうした?やっぱりどこか痛むのか」
「ぁ…いえ。大丈夫です」
黙り込んでしまった南の姿に、傷でも痛むのかと再び心配そうに尋ねてくるリーバー。
咄嗟に顔を上げると、南は笑顔で首を横に振った。