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科学班の恋【D.Gray-man】

第80章 再生の道へ



重さなど感じない薄っぺらな紙であっても、それが束になって高い位置から落下すれば衝撃は結構なものになる。
その痛みに耐えるようにぎゅっと目を瞑り歯を食い縛る。
そんな南の体を襲ったのは、予想とは違う感覚だった。



「わ…ッ!」



確かに衝撃はあった。
体を包む何かに押されて、バランスを崩し倒れる。
しかし転倒時の痛みはどこにもなく、代わりに力を入れた怪我した腹部にずきりと痛みが走り、思わず顔が歪んだ。
バサバサと耳に届くのは、分厚い書類が幾つも落下する音。

そして。



「ッ!」



間近で聞こえたリーバーの息を呑むような吐息。
目を瞑ったのは一瞬。
咄嗟に開いた南の目に映ったのは、ぴょんぴょんと天井近くを変わらず飛んでいるもこもこのゴーレムと、ひらひらと天井を舞っている散った数枚の書類だった。

そして、視界の隅にぼやけて映る小麦色のような髪。



(え?)



それがリーバーの髪だと悟った時、自分の体を庇うように覆い抱き締めてくれている腕に気付いた。



(…えっ!?)



今この部屋にいるのはリーバーと南だけ。
瞬時に感じている体温が誰のものなのか理解すると同時に、顔に熱が集中する。



「はぁ……間一髪…」



お互いに座り込んだ体勢で、覆うように被さり南を抱き締めているリーバー。
その口からほっと安堵の溜息が盛大に漏れる。

南の頭上に落ちてくる書類の束を見たリーバーに迷う暇などなく、体は勝手に動いていた。
上から被さるように抱き締めて、勢い余って座り込む大勢で膝をつく。
バサバサと背中に落ちてきた書類の衝撃は弱くはなく、今度からきちんと整理しないと、と内心反省した。



「は…はんちょ…」

「! 大丈夫か?南」



恐る恐る名を呼ぶ南の声に、はっと顔を離して腕の中の存在を伺う。
リーバーの薄いグレーの瞳に映し出されたのは、戸惑いながら見上げてくる南の姿だった。

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