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科学班の恋【D.Gray-man】

第80章 再生の道へ



✣ ✣ ✣ ✣



「………」



教団の細い通路の一角。
そこで松葉杖を付いたまま、そういえば、と。
南は目の前にある極々普通のドアを見つめて、黙り込んでいた。



(…初めてだ。リーバー班長の部屋に、入るの)



俺の部屋に来るか、とリーバーに誘われた時は最初こそ驚いてしまったものの、そこに他意がないことはすぐに理解できた。
寧ろ怪我人である自分の為に、気遣って食堂より近い自室を選んでくれたのだろう。
元々リーバーの時間を自分に下さいと頼み込んだ身。
断る選択肢など取れず、気付けば南はリーバーの自室前まで来ていた。

職場では毎日顔を合わせているが、プライベートな空間に足を踏み入れたことは一度もない。
ほとんど寝泊りが多い科学班の職場では、半ば仕事とプライベートは混合しているようなものだが。
それでも上司の部屋となれば緊張もするもので。



「………」

「…言っとくが、汚いからな」

「え?」

「部屋」



穴が開きそうな程にじーっとドアを見続ける南に、リーバーは苦笑混じりに砕けた話題を振った。
あまりの南の構え具合に、こちらまで緊張しそうだと。
それでも彼女の性格は知っている。
いきなり上司の部屋に誘われて緊張するなという方が無理かと、リーバーは早々目の前のドアを開けることにした。



「そ…そんなこと思ってませんよっ」

「そうか、じゃあ安心だ。ほら入れ」

「はい、お邪魔しま───」



促されるままに足を踏み込む。
松葉杖をコツリと付いて踏み込んだ部屋に、南は思わず目を剥いた。



(せ…狭い…!)



目の前に広がっていたのは、とてつもなく狭い空間だった。

否。

広さで言えば、恐らく南の部屋よりは広い。
しかし余りの物の多さに、窮屈に見えてしまうのだろう。

高々と部屋中に聳え立っているのは書類の山々。

ラビとブックマンの部屋のような散乱具合ではないが、机の上や引き出し、棚など目につく家具全てに山のように積まれている、全てが書類の束。
これでは科学班の職場での光景と、そう変わらない。

流石科学班第一班班長であり仕事の鬼である、彼の部屋と言うべきか。

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