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科学班の恋【D.Gray-man】

第80章 再生の道へ



必死に見上げてくる、二つの東洋人独特の暗い瞳。
真っ直ぐなその視線を受けて、リーバーは微かに顎を退いた。



(そんなふうに言われちゃあな…)



残業はする気ではいたが、今日中にやり遂げなければならない急ぎのものはなかったはず。
頭の中で職場に残した資料を思い出しながら、照れ臭さも混じって視線を逸らす。



(そういやそうだった)



南は大事な時には、真っ直ぐにこちらを見てくる姿勢を持つ。
そんなことを思い出して内心頷く。
心に深い傷を負っても尚、彼女らしい姿に自然と胸が満ちるようだった。

基よりずっと見舞いに行かなかった自分が悪いことは、自覚している。
だからこそ南が何かを望むなら、我儘は聞くつもりだった。
断る理由はどこにもない。



「わかった。それじゃあ少しだけ、俺に付き合ってくれるか?」

「! はいっ」



彷徨わせた視線を再び南に戻して苦笑混じりに誘えば、ぱっと明るくなる顔にリーバーもつい口元を緩めた。
まるでその場で花でも咲いたかのような明るさだ。



「少し行けば食堂がありますし、其処でお茶でも飲みながら───」

「いや。それならもっと近場があるから、其処にしよう。茶くらいなら出せるし」



そう首を横に振るリーバーの目は、南の松葉杖をつく足元を見つめていた。
杖がなければ歩けない彼女を、あまり歩かせたくはない。
それならば食堂よりも近い所がいい。
あそこならお茶の一杯くらい出せる。



「そんな所ありましたっけ?」



思い当たる場所がなく、不思議そうに首を傾げる南。
そんな南に、リーバーは持っていた分厚い書類のファイルをトンと肩に乗せて少しだけ笑った。
















「俺の部屋」

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