• テキストサイズ

科学班の恋【D.Gray-man】

第80章 再生の道へ



エクソシストとして深く教団に関わることはできない。
それは教団の人々との関係もまた同じこと。

頬杖をついたまま、瞑っていた目を薄らと開く。
眼帯で隠れて左目しか見えないラビの瞳は、朧気に宙を見つめていた。



「………」



頭に浮かぶは、一人の女性。
くたびれた白衣姿が常の、愛しい人。



(…くそっ。ズキってすんなよ)



彼女との関係もまた、深く繋ぐことはできない。
わかっているのに痛む心に内心悪態をつく。



「自重せいよ」

「んぁ?なんさ」

「あの者は教団の者じゃ。どう足掻いても同じ道を歩くことはできん。深追いするな」

「……誰さそれ」

「シラを切るな、馬鹿モンが。それくらいわかるわ」



誰と名を言わずとも、ブックマンが口にしているのは今正にラビの頭の中に思い描いていた人物。
南のことなのだろう。



「今までは女と軽い関係でいたようだからのう。目を瞑ってきたが…今回は違うだろう」



ずっと廊下の奥を見つめていたブックマンの目が、ラビへと向く。
嘘など容易く見破ってしまう師のその目をじっと見返して、やがてラビは自ら静かに視線を外した。



「…心配すんなよ。そこんとこは安心できっから」

「なんじゃ。確信でもあるのか」

「まぁな」



低く身を屈めて、柵に体重を預ける。
柵の向こう側にある広い廊下を見つめながら、ラビは静かに笑った。

確かにブックマンの言う通り、今まで抱えてきた想いとは違う。
南への想いはラビ自身では上手くコントロールできなくて、簡単には捨て切れないものだ。

けれど。



「そういう関係にはならねぇから」



どんなに今までにない柔らかい笑顔や照れた仕草など見せてくれるようになったとしても、彼女の奥底にある想いが誰に向いているのか。
それくらい知っている。

その心の指針は、ラビには向いていない。

/ 1387ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp