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科学班の恋【D.Gray-man】

第80章 再生の道へ



✣ ✣ ✣ ✣



人気のない第三広間へと続く廊下の一角。
二つの凸凹な人影が並んでいた。
高いものと低いもの。



「やー、でもまさかリナリーのイノセンスが、本人の血から作られてたなんてなぁ。驚いたさ」

「………」



廊下に設置された柵に肘を付いて凭れながら、深々と息をつくのはラビ。
彼とは反対に、背を向けて柵に身を預け煙草の煙を吹かしているのはブックマン。



「結晶型も、寄生型みたいに寿命が短くなったりすんのかな」

「………」



アレンやクロウリーのようにイノセンスを身に宿す寄生型エクソシストは、常に肉体が強力なイノセンスの力に侵され続けている。
故に肉体の寿命は通常より早く訪れ、そう長くは生きられない。
それが元々寄生型エクソシストが稀少だと言われる所以である。

ラビの呟きに、先程から考え込むようにブックマンは黙り込んだまま、何も応えようとはしない。
リナリーのイノセンスの説明を終え、司令室を出るとブックマンに促されるままついていった。
しかし"顔を貸せ"と言ったブックマン本人は先程から黙り込んだまま。
反応のない師に、しかし弟子であるラビは彼のそんな姿は見慣れているのか、急かす様子もなく。



「…ラビ」

「ん?」



やがて静かにブックマンは煙草を咥えていた口を開いた。



「お前は結晶型にはなるなよ。イノセンスにそこまで関わる必要はない」

「…ああ」

「もし結晶型の兆候が現れたらすぐ言うんじゃぞ」

「わかってる」

「そしたらもう教団(ここ)にはおれん」

「………」



さらりと告げられた最後の言葉に、ラビは開いていた口を止めた。



「……わかってんさ」



やがて一呼吸遅れで出てきたのは、先程と同じ言葉。
理解はできている。
予想もしていた。

結晶型イノセンス。
ブックマンとして興味はあるが、それを宿した本人の体にどんな負荷が掛かるのか。
未知数のものには手を出せない。

自分達は"傍観者"。
今は黒の教団にエクソシストとして付いているが、基本は中立となる立場なのだ。
完全なる"味方"ではない。
深く嵌ることは許されない。

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