第80章 再生の道へ
(うう…恥ずかしい)
無断外出してしまったことを呆れられることも然り。
ダンボ耳になってしまったみっともない姿を見られることも然り。
南は恥ずかしさで火が出そうな顔を俯かせた。
呆れた顔で肩を落とすコムイもそうだが、一番見られたくない人物はその隣にいる。
「………」
分厚い書類を手に、まじまじとこちらを見てくる長身白衣姿の男性。
南やジョニーの直属の上司である、リーバー・ウェンハム。
(こんな形で会う羽目になるなんて…)
会いたかった。
会って話をしたいと思っていた。
その目で自分を見て欲しかった。
しかし失態を犯し、子供のように叱られてしまった姿などではない。
ラビの言う通り、例え不可抗力であったとしても。
(…消えたい)
今すぐその場から逃げ出したくなる衝動に駆られながらも、勝手に司令室を出ていく訳にもいかず押し黙る。
そんな縮こまる患者服姿の南を、リーバーはじっと見つめていた。
呆れた表情は浮かべておらず、ただただじっと。
その眉が少しだけ眉間に寄る。
無断外出してジョニーと仕事をしていた所を、婦長に見つかったと聞いた。
そんな南は、車椅子で移動しているジョニーとは違う。
固定の松葉杖を身に付けてはいるが、それでも自分の足で立って歩くことができている。
司令室に入ってきた時、久々にリーバーが見た南の姿は、予想以上にしっかりとしたものだった。
そんな姿に内心ほっとしたりもした。
しかし不安は完全に拭えたわけではない。
アレン達に比べればまだまだぎこちない動きで、その両手は包帯がしっかりと巻かれていて肌色は見えない。
顔にも白いガーゼが貼り付けられたまま。
何より見慣れた白衣姿ではなく、患者服に身を包んでいる南の姿は、いつも以上に小さく見えた。