第80章 再生の道へ
「退院したら、すぐ六幻の修理に取り掛かるから。時間掛けててごめんね」
言葉で伝えるより、行動で示した方がきっと彼には届く気がして。
精一杯、自分のできることで神田に礼を云おうと思った。
「お前にできんのかよ」
「…え。」
が。
「検査書作るのでさえ手間取ってた癖に」
「う」
「こらっ神田」
ズバッと核心を問われて言い返せず、つい口篭る。
そんな南を庇うように、マリが口を挟んだ。
しかし冷たい物言いでも、確かに神田の言葉は正しい。
アジア支部で刀匠のズゥに色々と学びはしたが、数日で技術を身に付けられる程簡単なものではなかった。
「で、でも…ズゥ老師にも筋は良いって言われたから…また習いに行くよ。今度は六幻の手直しの所もしっかり見せて貰って、覚えるから。私が六幻を一から担当させてもらえるように。頑張る」
それはアジア支部で神田と約束を交わした時に、胸に誓ったことだった。
他人に冷たい神田が、ちゃんと自分の思いを受け止めて、期待せずに待ってやる、とまで応えてくれた。
それだけで充分だった。
自分にできることで、彼を支えられるならと思えたから。
「………」
「だから…その…」
視線が重なる。
じっと真っ暗な闇のように深い神田の目を向けられると、ついしどろもどろになってしまう。
語尾を萎ませながら再び口篭る南に、やがて神田は小さな溜息をついた。
「ったく…なら約束しろ」
「…約束?」
「アジア支部に六幻を持ってく時は俺に言え」
「持ってく時って…」
「俺も行く」
「…え?」
予想外な言葉に、思わず南はぱちりと目を瞬いた。
それでも変わらず自分に向けられているのは、漆黒のような神田の切れ目の瞳。