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科学班の恋【D.Gray-man】

第80章 再生の道へ



「傷は…いつかは癒えるから。今は時間が掛かるかもしれないけど…一人じゃないから。こうして、あの時あの場にいてくれた、アレンが一緒に生きていてくれてるから。それでいい」



それはジョニーと、タップのことで言葉を交わして強く思ったこと。
簡単には消えない傷を抱えてしまっても、一人ではないから。
少しずつでも癒していくことはできるかもしれない。

〝いつかは〟

教団で傷を負った全ての人々の代弁だなんて、大それたことは言わない。
しかし南にとって、それは嘘偽りない思いだった。



「私はそれでいい。アレンが生きていてくれたことが、私は嬉しいの」



だから気負わないで、なんて言えないけれど。
アレンは何も悪くないなんて、簡単に励ましもできないけれど。
彼の背負っているエクソシストという重圧が、少しでも軽くなってくれたらと願う。

エクソシストである前に、彼は一人の少年なのだから。



「生きていてくれて、ありがとう」



イノセンスである左手を握って微笑む。
そんな目の前の彼女から告げられた礼の言葉は、すんなりとアレンの心に落ちてきた。
するりと入り込んで、じわじわと浸透していく。

言葉の温かさ。

エクソシストではなく、共にある仲間として自分を見て貰っているような気がして。
上手く笑えなくて、アレンは俯いた。



「っ…」



教団に入団してから、色々なことを経験した。
AKUMAとの戦闘の日々、ノアとの対決、自分の死さえ一度経験して、新たな武器を手に入れた。
教団に入団してまだ日は浅いが、常人では経験できない体験をしてきた。

それでも自分が教団で過ごした月日は、南やジョニーやリナリー達の過ごしてきた年月に比べれば、ほんの瞬く間だ。
彼女達の間にある絆に比べれば、そこまでの関係は築けていない。
そうなんとなく思い込んでいた。

けれどどうやら、それは勝手な自分の思い込みだったらしい。



「…はい」



嬉しいような、泣きたくなるような、上手くは言葉にできない感情に、返せた言葉は返事一つだけ。
俯きながら、それでも応えるようにアレンの左手が握り返される。
そんな少年らしい反応に、南は言葉なくもう一度微笑み返した。

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