第80章 再生の道へ
(しまった)
思考が顔に出てしまっていたのだろうか。
南のなんとも言えない表情に、咄嗟にアレンは笑いかけた。
「すみません、少し考え事してしまって…」
「アレン」
「はい?」
メジャーを持つ手がアレンの左手を握る。
抗う理由なんてないから大人しく従っていると、包帯の巻かれた小さな手は、少しだけ握る力を強めた。
「ありがとう」
「え?」
「…第五研究所でのこと。まだお礼言えてなかったから」
「ぁ……いえ…僕は…」
(エクソシストとして当たり前のことをしただけで──)
違う
「………何も…できなかった、から…」
エクソシストとして教団の人々を守る。
そんな当たり前のこともできなかった。
舌が乾く。
笑みがぎこちなく固まる。
途切れ途切れに掠れる言葉。
南やジョニー達を結果的に助けたのはミランダだ。
レベル4を結果的に倒したのも師であるクロス・マリアン。
自分は何もできていない。
「できてるよ」
自然と視線が足元に下がる。
そんなアレンの耳に届いたのは、迷のない南の声だった。
「生きてくれてるでしょ。五体満足で、こうしてちゃんと」
アレンが口にした言葉が、そんな意味ではないことは充分南も理解していた。
それでも伝えたかったこと。