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科学班の恋【D.Gray-man】

第80章 再生の道へ



じっと見つめてしまっていたのだろう。
視線と沈黙を感じたアレンが、首を傾げながら愛想よく笑顔を返してくる。



「えっと…南さん?採寸しないんですか?」

「あ、うんっ」



その言葉に慌ててメジャーを引く。
すると勘の良い少年はすぐに気付いたのだろう、片手しか扱えない南の手に、そっと自らの手を添えた。



「僕もお手伝いします」

「ごめんね」

「いいえ、これくらい」



メジャーの先端を手に取りながら、申し訳なさそうに見てくる南を改めてアレンは目に映した。
退院はしておらず外出許可も出ていない。
だからと言って、ラビのように女性病棟に忍び込んだりもしないアレンにとって、やっと拝むことのできた南の姿。
その姿を改めて目にすると、無意識に眉は下がってしまっていた。

怪我の酷さで言えばアレンの方が上だっただろう。
しかし寄生型イノセンスを体内に宿している身。
治りは常人より早い。
もう神田と殴る蹴るの稽古(と言う名の喧嘩)もできる程。
それに比べて南やジョニーは、まだぎこちない動きでしか日常生活を送れていない。



(…痛いな)



そんな彼らの姿を改めて目にすれば、胸が痛む。
自分が傍にいたのに、守ってやれたはずなのに。
結果的にここまでの傷を負わせてしまった。



(まだまだだ。全然、足りない)



方舟でノアと対峙した時にイノセンスを覚醒させて、元帥と同じ臨界者としての力を身に付けた。
新しい力、新しい"退魔"という武器。
それでもノアとして覚醒したティキには散々やられてしまったし、レベル4という新しいAKUMAを倒すのも一人では到底無理だった。

もっと力を身に付けないと。
もっと強くならないと。
守りたいものを守れるように。
彼らをこれ以上傷付けさせないように。
もっと修行してもっと戦って。

もっともっと。



「アレン」

「…え?はいっ」



名を呼ばれて、はっと意識が目の前に戻る。
見ればメジャーを手に見てくる南の顔が、傍にあった。

その顔はなんとも言えない表情で、アレンを見つめていた。

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