第80章 再生の道へ
「医療班の人に見つかったら怒られるんじゃないかな…怪我を増やしてって」
「先に殴ってきたのは神田ですから」
「あ?テメェが剣術だっつってんのに足技なんか使ってくるからだろうが」
「あれは竹刀が折れて仕方なく、ですよ」
「ァあ!?何が仕方なくだ、躊躇なんざしてなかった癖に!」
「え?そうでしたっけ?」
「まぁまぁッ落ち着いて二人共!動いたら採寸できないからさ…!」
再び喧嘩勃発しそうな二人の雰囲気に、慌てたジョニーが間に割り込む。
よろよろと不安定にしか立てないジョニーを前に、暴挙には出られなかったのだろう。
苛立ち混じりの舌打ち一つで、神田は大人しく口を閉じた。
「アレン駄目だよ、そうやって神田煽ったら。すぐ喧嘩になるの、わかってるでしょ?」
「だって神田が…」
「めっ」
「…ハイ」
アレンもまた南に指摘されて、しゅんと口を閉じる。
その姿はまるで姉弟のようにも見えた。
真っ白な頭を垂れて大人しくするアレンに、息をつきながら南は再度その顔を見つめた。
あちこち傷付いた酷い顔。
しかしよく見れば、今付いた訳ではない傷痕も見える。
恐らくレベル4と戦った時の傷なのだろう。
レベル4との戦いで特に深手を負ったエクソシストは、アレンだった。
その体と、そして。
(沢山、責任感じさせちゃったんだよね…きっと)
その心にも。
自らの手で救えなかった団員達の命に、エクソシストとしての責任をきっと感じている。
アレンがそんな真っ直ぐな正義感を持った人間だということを、南は充分に知っていた。