第80章 再生の道へ
「おーいアレン!神田ぁ!急にそっち行かないでよ~ッ」
キコキコと車椅子の車輪の音と、ジョニーの慌てる声が響く。
南が目を向ければ、マリに車椅子を押して貰いながらこちらに向かって来る、同胞の姿があった。
「もう、急に行っちゃうんだから…大丈夫だよ。南とラビはいっつもこんな感じで、仲良いからさぁ」
「…いっつも?」
「こんな感じ?」
はぁっと大きな溜息をつきながら、傍に着いたジョニーが再び車椅子から身を降ろす。
神田とアレンはその言葉に反応したようで、感情の見えない声色で復唱する姿に、ラビはぞぞっと背筋を震わせた。
このままでは確実に二人から第二撃を喰らう。
先程より殺傷力のあるものを。
「オっオレもう採寸終わったし!次はアレンとユウさな!南任せたっ!」
「え?ああ…うん。じゃあアレンは私が採寸するから、ジョニーは神田任せていい?」
「オッケー」
自分への被害を止める意味で、慌てて南に仕事の話題を振る。
南に言われればアレンも大人しく従う他なかったらしく、眉を潜めつつ「はい」と頷く姿に、ラビはほっと胸を撫で下ろした。
悪気はないのだろうが、ジョニーのあの言葉は爆弾投下でしかない。
というか何故自分は恋路の邪魔をされているのだろうか。
アレンが南に好意を抱いているのは知っていたが、それは自分と同じものだったのだろうか?
神田に至っては、そんな感情があるのかさえ謎なのに。
(リーバーはんちょより厄介かもしんね…)
彼はまだ大人な対応をしてくれる分、助かる。
思わず深い溜息一つ。
そんなラビを余所に、南はメジャー片手にアレンに寄ると、まじまじとその腫れ上がってしまった顔を見つめていた。
「やり過ぎでしょ、これ…もうただの喧嘩だよ」
「あはは…マリにも言われました」
苦笑混じりに笑うアレンには、いつもの紳士スマイルの面影がまるでない。
片目を潰す程の青痣や、おたふく風邪のように膨れた頬が目に痛い。
神田もまたアレンと同様、普段目を見張る程の美形なんてどこへやら。
ぼこぼことあちこち顔を腫らせて、唇には血までこびり付いている始末。
どう見てもやり過ぎである。