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科学班の恋【D.Gray-man】

第80章 再生の道へ



「アレンから聞いたさ、第五研究所でのこと。…南も色々頑張ったんだってな」

「…それなら、私も聞いたよ。婦長さんから。リナリーのこと守ろうとしてくれてたんだってね」



ぽそりぽそりと、華奢な体を腕の中に閉じ込めたまま言葉を落とす。
返されたのは、同じく小さな呟き。

恐らく閉じ込められた病室での出来事を言っているのだろう。
トラウマであるルベリエを前に体を震わせるリナリーを、咄嗟に庇った。
けれど最終的に前に進むと、答えを出したのはリナリー自身だ。
自分が守るべきものの為に、その身にイノセンスを取り込んでまで戦おうとした。
守るだなんて大それたことはやっていない。

───それに。



(オレが守りたかったのは…)



命に優先順位なんて付けられない。
それでも真っ先に頭に思い浮かぶのは、この腕の中の存在。

アレンではなく自分が助けに行けていたなら、こんなに重症を負わせずに済んだのだろうか。
そんな今更振り返っても仕方のない自問自答を、つい頭の中で繰り返してしまう。



(…駄目さな、)



愚問だ。
埋めていた肩から顔を離し、頭の中から無駄な問いを追い出す。



「なら南だって。アレンを守ろうとしてくれたんだろ?AKUMAから」



憶測でしかないけれど、恐らく似たようなことはしたのだろう。



「すげぇさ」



それはラビの本心だった。
心配ではあるけれど、そんな南の一面も自分の好きな所だから。
ニッと砕けた笑みを見せるラビを見上げて、南は思わずぎゅっと拳を握り締めた。



(そんなこと…)



結果的に守れなかった人がいる。
タップやマービンやハスキンや科学班の面々。
つい彼らのことを思い出して、再び気持ちが沈みそうになる気配に、握った拳に力を込めた。

ラビは純粋に褒めてくれただけだ。
凹む姿なんて見せられない。

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