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科学班の恋【D.Gray-man】

第80章 再生の道へ



「いーじゃんか、ちっこいの。オレは嬉しいけど」

「?…なんでラビが嬉しいの?」

「だって、」



メジャーを握っていた手を離す。
ぱたりと地面に落ちるそれに、あ、と声を漏らした南の視線が追う。
そうしてメモリを見る為に近付いていた無防備な体を、そっと包むようにして優しく抱きしめた。



「こうしてすっぽり腕ん中に収まっちまうサイズって、なんか可愛くね?」

「は?え?ちょ…ラビっ?」

「あー……なんっか、すげぇ久しぶり。この感覚」



こそこそと病室には隠れて会いに行っていたから、堂々と触れることはできなかった。
しかし此処には傍にいることを咎めるナースや婦長はいない。

体が痛まないよう、やんわりと抱きしめた力は緩い。
しかし怪我を負っている南は、そう簡単に腕の中から抜け出すことはできないだろう。

目の前にある小さな頭に顔を寄せれば、ふわりと微かなシャンプーの香り。
医療班の物だから自分と同じ香りなのに、何故か南の体に纏っている匂いだと思うと妙にドキドキしてしまう。



(なんか変態臭ぇ…オレ)



とは思うものの、それで胸の高鳴りが止まる訳ではないのだが。



「ラビってば…っ」

「いいじゃんか、少しだけ。南の補充」

「補充ってよく言ってそれやるけど、本当に意味あるのっ?」

「勿論」



触れて実感する。
体の細さや肌の柔らかさ。
纏う匂いや宿した体温。
そして息衝く呼吸もそわそわと落ち着きのない動作も、南が生きている証。

生きて、確かに自分の腕の中にいる。

それを実感するだけで酷く心は落ち着いた。

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