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科学班の恋【D.Gray-man】

第80章 再生の道へ



「そう?…じゃあ次、身長ね。ここ持ってて」

「ん」



これでも沢山の人や土地を観察し、記憶してきた目と頭を持っている。
南がまだその心を整理できずに抱えていたら、その片鱗にいつかは気付く。
もしその時自分が傍にいてやれたなら、しかと彼女を支えてあげよう。
そう誰に宣言することもなく、ラビは静かに自分の中で自分なりの答えを出し切った。

南は自分をヒーローだと言ってくれた。
常に体を張って彼女を傷付ける者から守るだけが、ヒーローじゃない。
その心も守れるようにならないと。

時には足を止めて見守ることも、必要なことだ。



「にしても…ん、しょ…」



一人で出し切った答えになんとなく頭はすっきりして、改めて目の前の南を見れば、その顔は間近でじぃ~っとこちらを睨み付けていた。
否、見ている先はメジャーのメモリ。



「ラビ、また身長伸びた?…最近伸び幅凄くない?」

「あー…そういや一時期、寝起きにいつも体の節々痛くってさー。ギシギシ言ってた」

「流石成長期。教団に来た頃は、なんか…こう、もう少し低かったよね。…幾つだったっけ」

「177」



しっかりと記憶している数字を迷いなく告げれば、ラビ自身の手で頭の高さまで伸ばされたメジャーを見たまま、南の顔が驚きに変わる。



「わ、今185cmもあるよ。たった2年で10cmも伸びたのっ?」

「8cmな」

「大して変わらないから。凄いから。毎日一緒にいるとあんまり気付かないもんなんだなぁ…」

「…オレはわかるけど」

「え?」

「南が更にちっこくなってんの」

「……なんか嬉しくない」



ぽんっと旋毛が見える頭に手を置いてニッと笑えば、むすりと不服そうに眉を寄せられる。
予想していた通りの反応はやっぱり可愛くて、ラビは笑みを作った頬を緩めた。

予想していた通りの反応なのに、記憶にだって鮮明に残っている表情なのに、何故こうも実物を見ると胸は高鳴り頬は緩んでしまうのか。
恐らく理屈ではない何かが心の中で動いているのだろう。

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