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科学班の恋【D.Gray-man】

第80章 再生の道へ



「…なぁ、南」

「ん?何?…あ。ウエストなら一人で測れそう。動かないでね」



神田に南の任務先での出来事を聞かされてから、ラビの頭の中にはずっと不安が付き纏っていた。
AKUMAに追われ、ノアに捕えられ、南は一体どんな恐怖を味わわされたのか。

聞きたい。
知りたい。
南の弱さを知って、安心できる言葉を投げかけてやりたい。

でもそれは全て自分勝手な欲と憶測だ。

方舟で帰り着いた自分の弱い顔を隠すように、抱きしめて「おかえり」と言ってくれた南。
そこにはいつもの変わらぬ南がいて、変わらぬ笑顔で迎えてくれて、変わらぬ温かさを知った。
本当に涙が零れ落ちそうになってしまった程。

南は力のない人間だけれど、確かな強さも持っている女性だとラビは思っていた。

涙を堪えて、相手を思いやり、広い視野で物事を見て、時に耐えることもできる。
"強がり"という言葉はなんとなくしっくりこない。
自分の技量や力量を彼女は知っている。
その上で自分ができること、すべきことを行動として移すことができる。
エクソシストのように体を張り、時には自己犠牲をも伴うような、そんな"強さ"ではない。
自分の弱さもしかと見つめて向き合い、然るべき行動ができる。
そういう"強さ"を彼女は持っている。
仕事中毒者の癖があるから無茶することも多いが、それは残業や徹夜等、科学班内での仕事の場合だ。

そんな南だから、方舟で教団に戻り再会できた時、何も変わらなかった彼女は自分で心の整理をもう終えていたかもしれない。
自分の足で立ち、前を見据えることができていたかもしれない。

そんな南に部外者であるラビが首を突っ込めば、またその心を掻き乱すことになる。
そんなのはただ自分の欲を消化したいが為の、身勝手な行為だ。



「で、何?」

「………いや」



だから、聞きたくとも聞けない。

不思議そうに問いかけてくる南に、ラビは静かに首を横に振った。

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