第80章 再生の道へ
「はい、じゃ其処に立って。動かないでよ」
「…つーかできんの?そんな状態で」
「採寸くらいできるよ。これもリハビリだって」
「だからそういうのは専門家が決めることです」
「はいはい。まずは胸囲ね、腕上げてー」
「…はぁ…りょーかい」
右耳から左耳にスルー状態で、メジャーを手に声をかけてくる。
そんな南に先に諦めたのはラビだった。
ジョニー達から少し離れた場所で、南と共に採寸取りを始めることにした。
「ラビ、此処持ってて」
「…ジョニーに手伝ってもらったら?やっぱ一人じゃ無理だって」
「ジョニーにはアレンと神田任せてるから。あっちもあっちで止めないと。はい持って」
「…ハイハイ」
片手は松葉杖に固定されているから、両手を駆使してはメジャーを扱えない。
そんな南に言われるがまま、渋々ラビは助手となった。
「あ、前とサイズ変わってる。ほんと男の子は成長期伸び幅凄いよね」
「……貸して。オレ書き込むから」
「ぁ…ごめん」
「ん」
感心しながらグーで握ったペンで、もたつきながらサイズをノートに書き込んでいく。
そんな南の手からペンを取り上げて、言われたサイズを書き込む。
成長を喜ばれるのは嬉しいが、どうにも年下扱いされてる気がして素直に喜べない。
実際に年下なのだからどうしようもないのだが。
どんなに自分に向ける笑顔が柔らかく優しいものに変わっても、やはり南にとっては"年下の男の子"括りなのか。
(……でも、)
そんな自分の腕の中は怖くないと、南は言ってくれた。
あれは異性として見ていないからこその安心感とは違う。
ノアに襲われ、捕えられてしまった恐怖心を和らげていたような言葉。
ふとそのことを思い出して、ラビはサイズを書き込んでいた手を止めた。