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科学班の恋【D.Gray-man】

第82章 誰が為に鐘は鳴る



「だからって二の足踏んでても何も始まらんでしょう。支部長、いい加減行きますよ」

「ぉ、おいジジ!勝手に僕の前を歩くな!」

「ヘイヘイ。お前らも行くぞー」

「あ、待ってジジ先輩っ」

「じゃ、ウォンさん!ちょっと行ってきますんで!」

「何かあれば報告を入れます」



トプリと水面に波紋を広げるように、結晶体の入口を通り方舟の中へと進み行くジジ。
後を追うようにしてウォンに頭を下げるシィフ達。
頷くウォンの隣で空気の振動ができたかと思うと、突如として現れたのは桃色髪の少女だった。



「バク」



凛とした声がバクを呼ぶ。
振り返った鋭い切れ目が、少女を把握した途端に眉を潜めた。



「なんだフォー。まだ喧嘩でも───」

「何かあったらすぐあたしを呼べ」

「!」

「いいな」



凛とした響きは変わらず、それだけ言い残すとブツリと回線を切るかのように少女の姿は消え去った。

"もしかしたら、この先には"

そんな微かな不安を残しつつ、バクもまた厳しい顔で方舟の入口を跨いだ。

果たして鬼が出るか蛇が出るか。






























「───お?」



最初に方舟の出口を通ったのはジジだった。
いつもなら教団本部の出入口には、警備員が張り付いて暗号照合をしてくるはず。
なのにその"いつも"の見慣れた姿は何処にもない。



「真っ暗ね…」

「停電でもしたのかな?」

「だから電話も通じなかったんじゃねぇの?」



次に方舟から顔を出したのは、科学班見習いトリオ。
通ったゲートの先は、真っ暗闇。
広い教団を照らす照明は、一つも機能していないようだ。



「馬鹿者。停電にしては期間が長過ぎだ。連絡が取れなくなって一週間は経っているんだぞ」



最後に方舟から出て来たバクが、厳しい顔で腕を組む。



「例え停電が原因だったにしても、コムイ達に何かあったのは変わりないだろう。本部襲撃があったばかりだと言うのに、明らかに警備が薄過ぎる」

「じゃあその"何か"ってのも調べる為にも、団員達を見つけねぇと。おーい!誰かいないのかー!?」



口元に手を当てて、暗闇へと呼び掛ける。
ジジの声に応答する者はいない。

しんとした無音の静寂は、少し不気味にも思えた。

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