第82章 誰が為に鐘は鳴る
「お前も遊び半分だろう、ジジ…」
「おやぁ。支部長がそれ言うんすか?いっっっつもリナリー目当てで本部に遊びに行ってる支部長が?」
「っ遊びになど…!と言うかだな!貴様の方が昔から何かと会議だ現地対応だ根も葉もない言い訳つけて、本部に出張に行っていただろう!支部の経費を私用化するな!」
「なーに言ってんすか。俺はちゃんと本部科学班の手伝いに行ってましたよ。その証拠に毎回報告書出してたでしょう。それに俺はいずれあそこに戻る気なんで。自分の出世の為に努力するのはいけないんすか?」
「っ、それは…」
「え!ジジ先輩、本部への出戻り狙ってんすか!?」
「そんな簡単に出戻らせてもらえるのかなぁ…先輩、上と喧嘩したんでしょ?」
「上がなんだ。そんなことでビビってちゃあAKUMAと戦えねぇだろ!俺は腐っても教団の一団員だ!」
「おお…!なんか先輩格好良いっす!」
「流石、エクソシストと共にAKUMAと戦っただけありますね」
「私、またその経験談聞きたいですっ」
「おっそうかぁ?お前ら可愛げあるじゃねぇか!」
「はぁ…遠足に行くんじゃないんだぞ…」
わいわいと背後で会話に花を咲かせるジジ達に、バクは向かう前から疲労を感じガクリと肩を下げた。
これから彼らが向かう先は、黒の教団総本部。
新本部への引っ越し準備を進めているはずだったが、数日前からぱたりと連絡が取れなくなった。
最初は考察を巡らせながらも連絡を待っていたバクだったが、一向に繋がらない電話機器についに迷う腰を上げたのだ。
「とにかく、ついて来るならしっかり働け!もしかしたらこの間のノアとAKUMAの襲撃のように、何か一大事が起きているかもしれないんだぞ!」
強い声を投げるバクに、途端に蝋花達の背に緊張が走る。
本部襲撃にて大きな損害を被り、厳戒態勢が取られている今現在、再び本部が敵襲されることは考え難いが決してゼロではない。
方舟の先には、もしかしたら戦場が待っているかもしれないのだ。