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科学班の恋【D.Gray-man】

第82章 誰が為に鐘は鳴る



初めこそラビの仮面を見破り、痛い指摘をしてきたダグ。
それでも取り繕ったまま面白がって付きまとえば、鬱陶しそうな態度を取られた。
南のように距離を置くのではなく、真っ直ぐな瞳を向けて。






"全く本心を映さず、反射だけで人と接している。そんな人とまともに会話しようとは思わない"






ラビの目をガラス玉のようだと喩え、それを嫌悪した。
初めてだった。
そんなふうにラビの仮面を見て見ぬフリせず、思いをぶつけてきた相手は。
大人しそうで一本筋の通ったダグは、後に教団に入団したアレンも似ているようだと思った。

しかし所詮は似ているだけ。
ダグはダグ。
彼の代わりはいないのだ。

その身をAKUMAの材料にされ、命の灯火を消した彼以外には。



「やめろよ南…似てるのはそこだけで充分さ…」



型は違えど、ラビの仮面を見破ったのは南もダグと同じだった。
だからと言って、何故心を開いた相手に限ってこの手をすり抜けて命を落としていくのか。






"…ラビはちょっと変わったね…"

"え?どこが?"

"ちゃんと僕の目を見て、話してくれるようになってる"






1年間、ダグと共に教団で過ごした。
任務は数える程しか共にしなかったが、教団内で言葉を交えることは幾度となくあった。
その中で少しずつだが確実に、ラビの瞳の色を見逃さなかったダグ。
何気ないその一言が、どれだけラビの心に残り続けていたか。
彼は死ぬまで悟らなかっただろう。






 お前は何者か?
  ───ブックマンを継ぐ者

 ブックマンとは何か?
  ───ブックマンとは世界を渡り歩き
    歴史を追い続けて行く者

 ブックマンはどう在るべきか?
  ───例えるなら一陣の風
    風は留まらない
    通り過ぎた場所へ心を向けはしない
    ただただ、流れるだけ───




 

ダグを喰らいAKUMAと化したコレットを昇華した、あの夜。
迎えた朝日を浴びながら、いつものように自身に言い聞かせた。

仕方ない。
これは戦争なんだから。

人が一人死ぬ度に心を向けていては、流れ続けてなどいられない。
自分は歴史の傍観者であり、記録者なのだと。

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