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科学班の恋【D.Gray-man】

第82章 誰が為に鐘は鳴る



「寝れば、回復するから。部屋、行けばいいだけです、から…」

「でもよ…」

「お願いです、ジジさん…ベッド、がいい」



頑なに医務室行きを拒む南の主張に、ジジはついに口を噤んだ。
そうも儚い声で主張されれば、強くは言えない。

寧ろ、



「やべぇな、部下にベッドに誘われちまった」

「何真面目な顔で阿呆なこと言ってんだ」

「ゲふぅ!」



非ぬ方角へと飛ぶジジの頭に即座に落ちたのは、リーバーの重い拳だった。



「っっお、ま…!頭、割れたら、どうすんだ…!」

「よかったな、少しはマシな思考回路になるかもしんねぇぞ」



頭を抱えて悶えるジジに溜息一つ、しがみついていた南の手首をリーバーの大きな手が掴む。



「南、放せ。俺が連れてく」

「っでも」

「部屋に連れてきゃいいんだろ。医務室には行かねぇよ」



どんなに相手が抗おうとも医務室に放り込んでいたリーバーに、恐々と南の目が向く。
声を荒げることはしない。
深く濁った目に向き合ってはっきりとそう告げれば、やがて南の手はジジの服から離れた。
背中と膝に回した腕で体を抱き上げれば、想像以上に南の体は軽かった。
体力が落ちているのもあるだろうが、軽さだけではない体の柔らかさに男とは違うのだと気付く。



(って何考えてんだ、俺)



そんな不毛な思いをさっさと思考から追い出すと、リーバーは野次馬を目で追い払った。



「定時の奴はさっさと帰れ。他は仕事だ」

「あ、あの、班長…私、自分で歩けます…っ」

「歩かせるより運んだ方が早い。大人しくしてろ」

「え、あ…っ」



目を白黒させている南に構うことなく歩き出すリーバーに、見送らざる終えないマービン達の口を挟む隙はなかった。



「…班長にあんな優しさがあったとはな…」

「いいんじゃないか?偶には。差別化するつもりはないが、南は班長には丁度良い薬だよ」

「違いない」

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