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科学班の恋【D.Gray-man】

第82章 誰が為に鐘は鳴る



「えっ」

「っ南!」

「なんだどうした?」

「うわ、南が倒れたぞ!」



仰向けに倒れ込んだ南の顔は顔面蒼白。
受け身も取れずに地に落ちた体に、帰ろうとしていた研究員達がざわめく。



「そこまで強く押してねぇんだけどな…」

「そういう問題じゃないだろッ」

「なんだ、どうした?」

「あ、ジジさん」

「それが南が倒れたらしくて…」

「南が?お前ら其処退けっ」



研究室の扉の前で倒れてしまっては道も塞がる。
一向に帰る気配のない騒ぐ彼らに、何事かと顔を出したジジは急いで群衆の中を突っ切った。
掻き分け進めば、倒れた南を覗き込むマービンとハスキンの姿を捉える。



「大丈夫か?南っ」

「目ぇ開けろって」

「…ぅ…」

「お、気付いた。頭打ってねぇか?」

「貧血でも起こしたんだろう」

「…ぃ…」

「ん?」



声を掛ければ、薄らと開く南の瞳。
朧気な目にぽそぽそと乾いた唇が何かを告げ、拾うように二人は耳を寄せた。



「……ねむ、い……」



拾ったのは、なんとも拍子抜けする言葉。



「なんだ寝不足なだけかよ。驚かせんな」



しかし納得もいく。
あれだけ不眠で仕事をしていたのなら、睡魔で倒れても可笑しくはない。



「こらマービン。寝不足だって充分問題だぞ」

「俺らの職場じゃ当たり前のもんだろ?」

「度を越せば問題だって言ってるんだ」

「(あちゃあ…やっぱりな)ほらほらお前ら退け。こいつを医務室に連れてくからよ」



言い合う二人を手で払うと、ジジは倒れたままの南の傍に膝を付いた。



「南、体起こせるか?医務室行くぞ」

「っ大丈夫です…ちょっと、眠気がきただけで…」

「倒れる時点でアウトだろ。いいから行くぞ、腕回せ」



支えるように細い手首を握って肩に回させる。
すると抗うように、南の手がジジの服を掴んだ。



「大丈夫、です…医務室行かなくて」

「何言ってんだ、餓鬼じゃあるめぇし。言うこと聞け」

「ぃ、嫌です」

「あ?」



ふるふると力なく首を横に振る。
それでもすぐには立ち上がる気力がないのか、縋るように南はジジにしがみ付いた。

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