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科学班の恋【D.Gray-man】

第82章 誰が為に鐘は鳴る



「根っからの仕事人間だがよ、根っからの人間臭い奴なんだよなぁ。お前は」

「なんだよそれ」

「そういう奴は中々いねぇし、そういう奴程コムイ室長や南達には必要だってこった。俺は好きだぜ、そっちのお前の方が」



ぽん、と軽く背中を叩いてくるジジの手。
この手に幾度となく体を叩かれたことはあったが、こんなに優しい行為だったとは。
今更ながら気付く元先輩の器は、見た目よりも遥かに深い。
そして今更ながらでも、気付くことはできたのだ。
今からでもきっと遅くはないだろう。
ふ、と優しい笑みがリーバーの口元に浮かぶ。



「ジジ、台詞がクサい」

「うっせ」










デスクに散乱していた書類をまとめ終えると、定位置だった椅子から腰を上げる。
定時に帰りの身支度をする南の姿は珍しかったのだろう、見つけたマービン達が声を掛けた。



「よぅ、南。今日は定時か?」

「あ、はい。お疲れ様です、マービンさん。ハスキンさん」

「お疲れ様。じゃあゆっくり休めるな。よかったよ」

「そうだ、なら今から飲みにでも行かねぇか?折角早めに上がれたんだしよ」

「おいマービン、折角の定時なんだから南を休ませてやれ」

「んだよ、ノリ悪ぃなぁ」

「あはは…お誘いありがとうございます」



共に研究室の外に向かいながら雑談を交える。
飲みの誘いは純粋に嬉しかったが、今酒を一口でも摂取すれば倒れてしまうことは南自身目に見えていた。
エナジードリンクのみで支えていた体力ももう限界だ。



「じゃあ飲みは今度な。空いてる時間あったら教えろよ」

「教えなくてもいいからな、南。しっかり休めよ」

「お二人も、休んで下さいね」



研究室の前で互いに別れる。
片手を上げるハスキンの横で、マービンが労いに南の肩を叩いた。
ぽん、と肩を叩く動作は軽いもの。
しかし押された動作に、揺れた頭はくらりと遠のく。



(あ───)



どさ、とくたびれた白衣が床に落ちた。



「……南?」

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