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科学班の恋【D.Gray-man】

第82章 誰が為に鐘は鳴る



「なぁ、リーバー」

「仕事しろ」

「第一声がそれかよ!だが生憎だったな、今日は先に出張仕事をこなしてきたんだよ。今は俺の自由時間だッ」

「それならさっさとアジア支部に帰れよ」

「うっせ!長時間移動してきた先輩を少しは労れってんだ!」

「"元"先輩な」



出張という名の遊びに来た見慣れた元先輩に、仕事の手を止めることもなく右から左にスルーする。
しかしジジもまたリーバーにちょっかいを掛けに研究室に顔を出した訳ではなかったらしく、文句もそこそこに声を静めた。



「んなこたぁどうでもいいんだよ。それよりリーバー、アレ」

「あれ?」

「アレだよアレ。すっかり我が科学班の顔になっちまってんじゃねぇか。折角の若い女が台無しだぜ」



そうぼやくジジの目線の先には、デスクに噛じり付いて仕事をする南の姿があった。
くたびれた白衣姿に、顔には生気が見られず目の下の隈も唇のかさつき具合も酷い。
科学班なら誰しもが通る道であろう、過労の表情を浮かべている。



「ああ、あれか。仕事熱心ってことだろ」



ジョニーに比べれば体力はある方だと思っていたが、残業も徹夜もこなし倒れない様は少しばかり感心する。
ちらりと目を向けただけで再びデスクに向き直るリーバーに、ジジは首を傾げた。



「お前、言葉と表情が伴ってねぇぞ」



仕事熱心だと褒める割には、リーバーの表情は険しい。
どちらかと言えば不服さを表しているように見えた。



「なんで拗ねてんだよ。また噛み付かれでもしたか?」

「…あいつは人を頼らなさ過ぎなんだよ。優しさも度を越せばただの傲慢だ。それで空回って自滅でもしてみろ、誰も助けちゃくれねぇよ」



あの夜、自分がやり切ると言い切った南にリーバーは好きにしろと仕事を返した。
どうせすぐに根を上げるかジョニーのように倒れるかするだろうと予想していたからだ。
しかしそれから数日経とうとも、南は根も上げず体調不良になることもなく、黙々と仕事をこなしていた。
それが良いことだとは思っていない。
だからこそ不満も出るのだ。

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