第82章 誰が為に鐘は鳴る
「でもジョニーもオレと並んで病院飯食う羽目になるとはな。此処の飯、低カロリーで食べた気にならねぇんだぜ?」
「タップは日頃食べ過ぎなんだよ。節制して早く仕事復帰してくれないと、南が大変なんだからなっ」
医務室の長椅子に座っているのは、点滴を腕に刺したジョニーだけではなかった。
その隣で大きな腹を揺らして笑うは、数日前にリーバーに医務室に放り込まれたタップ。
一見してジョニーより元気な様子だが、健康診断では色々とレッドラインを越えてしまった身だ。
婦長から数日の安静を言い渡されたジョニーは、暫くタップと並んで教団の病棟に世話となる。
「はぁーあ…でもリーバー班長をあそこまでカンカンに怒らせるなんて…オレ、職場に戻れるかなぁ…」
「何言ってんだよ、班長のお怒りなんていつものことだろ?」
「タップは楽観的なんだよ…オレ、リーバー班長に体力ない奴は辞めろって言われちゃったんだよ…」
「そう落ち込むなよ、元気出せって。オレも痩せねぇと死ぬぞって言われたぜ?」
「そうだよ、ジョニー。私だって女扱いしないから覚悟しろって言われたことある」
「僕は仕事しないとコロスって言われたよ」
「「「え?」」」
落ち込むジョニーを励ますタップと南。
と、知らない声が一人。
否、黒の教団で働く者ならば誰もが一度は耳にしたことのある声だった。
「あの人、怖いよねー」
いつから其処にいたのか、南の隣に座ってしみじみと呟いているのは真っ白な室長服に身を包んだ男性。
「「「コムイ室長!?」」」
コムイ・リー。
黒の教団本部の最高司令官である。
「や。君達リーバーくんに医務室に放られたのかい?三人揃って仲が良いねぇ」
にっこりと笑いかけてくるコムイもまた、なんらかの病気か怪我を抱えて此処にいるのか。
「いえ、私は二人のお見舞いに…コムイ室長は?」
「僕?僕はこっわい君達の上司の魔の手から逃れにね」
「「「………」」」
どうやら違ったらしい。
最初こそ驚いたが、部下であるリーバーがこの最高司令官に仕事をしろと罵声を浴びせ時には殴り付けるのは日常茶飯事。
今日も今日とてサボり癖のあるコムイは、リーバーに追われていたらしい。