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科学班の恋【D.Gray-man】

第82章 誰が為に鐘は鳴る



「いや?よちよち歩きの子犬に噛まれやがったなと思って。だから言ったろ、真心二割増しでいかねぇといつまで経っても懐かれねぇぞー」

「何言ってんだ」



素っ気なく顔を逸らすと席に着く。
ジジ越しに見えたのは、床に飛び散った薬品の片付けをせっせとこなす小さな背中。



「あいつは子犬なんかじゃねぇよ」



何かと騒がしい科学班研究員の中で目立つ方ではないが、ただ黙って誰彼従っている訳でもない。
地道に仕事をこなしながらも改善点を見つければ、提案だってするし自分の意見も述べてくる。
そうして半年間過ごしてきた南は、タップやジョニー以外の他研究員とも自然と打ち解けられていた。



「ほら、南。その手袋使え。素手で触ってたら手が被れるぞ」

「ありがとうございます、ハスキンさん」

「そこ綺麗にしたら、ついでに俺のデスクも頼むわー」

「マービンさんが清掃代出してくれるなら、喜んでしますよ」

「うわ、金取んのかよオイ」

「世の中ギブ・アンド・テイクです」

「ははっ一本取られたな、マービン」



それは南が異性という立場で仕上がった舞台ではない。
南自身の人柄が造り上げた足場だ。



「お前こそ南を愛玩動物なんかに見てたら、そのうち足元救われるからな」

「…ふーん?」



ハスキン達と笑い合う南から視線を外し、再びデスクへと向き直る。
そんなリーバーの言葉に意外そうに目を細めると、ジジはまた一つ笑った。

ニヤけるようなものではなく、楽しそうな顔で彼を見つめて。






























「───うわぁあ!ごめんよ南ー!!オレの分まで仕事背負わせてぇええ!」

「ううん、いいよそれくらい。それよりそんなに叫んで大丈夫なの?もう頭くらくらしない?」

「大丈夫!点滴打って貰ったし!」

「そっか」



仕事帰りに寄った医務室。
其処で馴染みの同期に声を掛ければ、随分と元気な姿を見せてくる。
見舞いに訪れた南は、泣き顔笑顔と忙しいジョニーの姿にほっと笑顔を溢した。

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