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科学班の恋【D.Gray-man】

第82章 誰が為に鐘は鳴る



「南はなぁ、この素朴さがいいんだよ。色気ムンムンねーちゃんでも来てみろ。目移りして仕事になんねぇだろー」

「マービン…お前それ、南を褒めてんのか貶してんのか…」

「にしてもよォ、こんな芋い奴は初めてだぜ。女っぽさが微塵もねぇな」

「ジジもそこら辺にしとけ。またセクハラだ暴言だ訴えられるぞ」

「でもよぉ、折角の女!職場の癒やしが…!」

「いやお前の職場じゃないだろ此処」

「なんでいるんだよ」


「…はぁ…」



わいのわいのと南を囲んで騒ぎ立てる。
リーバーには見慣れた科学班連中の姿だが、新人の南にはまだまだ不慣れな環境だろう。
男でも女でも関係なく、事在るごとに新人はよく弄られる。
それがフランクと讃えられ、時にはセクハラだパワハラだと訴えられるこの職場ならではの味だ。

マービンに肩を組まれ、ジジに片手を握られている南は逃げ場がない。
揉まれて困っているであろう、南の姿にリーバーは溜息はつくもののすぐに声を掛けなかった。
場に慣れるのも指導の一環だと傍観していたが、段々と大きくなる騒ぎにぴしりと額に青筋が浮かぶ。



「ったく…」



これでは仕事に集中できないと、握っていた羽ペンを置き椅子から腰を上げた。



「お前ら───」

「あのッ!」



しかしリーバーの声が皆に届く前に、彼らの耳が捉えたのは輪の中心で固まっていた人物、南の声だった。
誰も予想しなかったのだろう、意外な声に皆の目が向く。
その中で、南は片手でずり落ちそうになる段ボール箱を支えながら小さな声を絞った。



「箱、落ちてしまうので…手、放して、くれませんか…」

「…あ、ああ…ワリ」

「マービンさん、も。ゴーレム達が潰れます…っ」

「あ。すまん」



ピィピィと南の頭や肩に乗ったゴーレム達がはやし立てる様は、まるで加勢しているかのようだ。
言われるまま二人が身を退けば、改めて段ボール箱を抱え直し一息。
そうして南の目はジジへと移った。

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