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科学班の恋【D.Gray-man】

第82章 誰が為に鐘は鳴る



ジジとリーバーの教団での付き合いは長い。
リーバーが新人科学者として入団した頃から、ジジは彼のことを目にかけ何かと世話を焼いてきた。
月日が経つにつれて世話を焼くというより焼かれることが増えた気もするが、それでもジジにとっては大事な部下の一人だ。

若さ故ではない、誰よりも熱い思いを持ち誰よりも努力家で誰よりも責任感があり、コムイ・リーという人物に心揺さぶられた男。
そして誰よりも命に対して誠実に向き合っている男だ。

だからこそ、



(あれからもう4年だってのに。こいつのこういうところは変わってねぇな…)



彼の心を抉った彼女の死は、深い溝となってしまった。



「お前、いっつもこの時期になると塞ぎ込むよなぁ。餓鬼じゃねぇんだ、ちったぁ周りを見ろってんだ」

「なんのことだ」

「しらばっくれんじゃねぇよ。あれから4年だぞ」

「………」



彼の心に深い溝を作った出来事に、今では触れられる者は少ない。
それだけ長い間付き合い時にはぶつかってきたジジだからこそ、踏み込めること。

4年前のあの日。
雨露が降り注ぎ湿気が帯びるこの時期に、リーバーは一人の女性を失った。
教団に入団したばかりのリーバーが、初めて親身に心を寄せた人物が、エクソシストである彼女だった。
恋仲だった訳ではない。
しかし家族同然の思いを寄せ合っていたことは、ジジも知っていた。
家族を失い独りで戦いに身を投じていた彼女の、帰り着く場所になろうとしていたのだろう。
リーバーの熱い思いの下には、常に優しさがあることもジジは知っていた。



「いい加減、大事な奴を作ってみたらどうだ」

「は?」

「お前は欲しがることをしないからなぁ。そういう人間程、理由も建前も必要ない、ただ欲しいと思えるだけの奴を作ることが大事なんだよ」



手頃な椅子を傍に引き寄せると腰を下ろして、書類に埋もれたデスクの隅に肘を付く。
そんな居座る気満々のジジに、リーバーは鬱陶しそうな目を向けた。



「んだよ、そういう話なら余所でやれ、仕事の邪魔だ。俺はもうお前の部下じゃねぇんだぞ」



人一倍努力家なリーバーは教団内でも確実に実力と成果を付けていき、部下だったはずの地位は気付けばジジより上のものとなっていた。
若くして教団本部科学班第一班の班長にまで昇進した彼の言葉は、確かに正しい。

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