第82章 誰が為に鐘は鳴る
なんで彼女なんだ
いつかは人は死ぬ
そんなことわかってる
でも彼女は死ぬにはまだ早過ぎる
聖戦を終えてやりたいこと、なりたいもの、沢山あったはずだ
本当はもっとずっと、普通の女性でいたかったはずなんだ
血に塗れて、傷付いて、戦いに埋もれるんじゃなくて
好きなことを学んで、好きな所へ行って、時には友人を作って、時には恋をして
そうして、普通に生きていたかっただけなのに
最期、死ぬ時でさえひとりで
きっと寂しかったはずなのに
きっと悲しかったはずなのに
怖かったはずなのに
苦しかったはずなのに
悔しかったはずなのに
彼女の安らかな死に顔は、今まで見た中で一番哀しい笑顔だった