第82章 誰が為に鐘は鳴る
神様、なんて存在がいるのなら
一つだけ感謝します
私が逝く最期の時を、リーバーに見せなかったことを
神様、なんて存在がいるのなら
沢山憎みます
こんな世界に私達を生み落として、結局彼を悲しませることしかできなかったことを
でもまぁ、神様なんて信じてないんだけどね
『死ぬな…ッ!』
ああ、でも
本当にこれが最期なら、リーバーの笑顔がもう一度見たかった
あの大きな手で、頭を撫でてほしかった
あの大きな腕で、抱きしめてほしかった
そしたら、私もいつものように抱きしめ返すから
何度だって大好きだよって伝えるから
もっともっと、リーバーと一緒にいたかったよ
───でも
今の私の顔はぐしゃぐしゃで
血や涙の跡できっと酷いものになってる
…そんな顔、見たらリーバーはきっと悲しむだろうから
「っ…かひゅっ…」
笑え、私
最期なんだから、女は綺麗でいたいでしょ
笑って、大丈夫
ちゃんと笑えるから
貴方を思えば、何度だって
私は戦場でも笑っていられるから
笑って 笑って
そうして、ふつりと意識は堕ちた