第82章 誰が為に鐘は鳴る
「リ…バ、…」
『いいんだ…お前が気負うことじゃない…いいんだ、』
何度も言い聞かせるように、それはまるで自分に言い聞かせるように、ゴーレムの向こうから届く愛しい人の声
そんなリーバーの声が、段々と遠くなる
あれ…視界もぼやけてきた
パタパタと傍で羽ばたく音がするから、ゴーレムは近くにいるんだろうけど、首を擡げて確認するだけの力は残っていない
微動だにできない倒れたままの私の視界に映るのは、ぼやけた真っ青な空
…綺麗だな
「リ…バ……大好、き……世界で…一番、あい…してる」
あいしてる、なんて
誰に聞かれてるかもわからない通信機で、こんなこと絶対言わないと思ってたのに
変だなぁ、今ではすらすら出てくるんだから
『っ…!今、そっちに向かってるんだ!もうすぐ着く!それまで気をしっかり保て!!』
ああ、こっちに来てくれてるんだ…だからゴーレムも通じたんだね
神様の計らいじゃなかったみたい
「此処、の…空、ね……凄く、綺麗…」
『おい…!』
「リーバ…と、一緒に…見たかった、な…」
笑おうとすれば咽て、目の奥が熱くなって一気にぼやけた
頬を熱い涙が伝う
『そんなこと言うな…!死ぬな!!』
"死ぬ"
リーバーのその言葉で、再確認
ああ、やっぱり私は死ぬんだなぁって
『お願いだから…ッ!死ぬな…!!』
ゴーレムの向こうから聞こえる悲痛な叫び声
ああ、きっとリーバーは泣いてる
その涙を拭ってあげたいのに、声がもう出ない
体も動かない