第82章 誰が為に鐘は鳴る
✣
「ごひゅっ…ひゅっ…」
空気の漏れる音がする
同時に、液体が漏れる音
それは私の口からじゃなく、私の喉から
最初は激しい痛みだったのに、今は熱い感覚しかない
それは身体が痛みで麻痺してる証なんだって、何故か冷静な頭で判断している自分がいた
「か、ひゅっ…」
目の端に見える私のゴーレム
よかった、これは無事だったんだ
…ファインダーの皆は、守れなかったけど
でもAKUMAは倒した
それも結構な数
ざまあみろ、千年伯爵
……あいつは、倒せなかったけど
『───ジジ…』
ゴーレムに手を伸ばす
通信機能も付いてるけど、本部との連絡は電話機がないとできない
『…な……ぃ…!』
なのに雑音混じりで向こう側から届いた声は、大好きなあの人の声だった
あれ…なんでだろう
あの人、本部にいるはずよね?
『おい!返事しろ!!』
でも段々とはっきり届いてくる声は、やっぱりあの人のもの
…最期だから、神様が夢でも見せてくれてるのかなぁ…
「…リ…バ……」
ゴーレムに縋る力も、声を振り絞る力も、今の私にはない
でも向こう側のあの人は、私の声を拾ってくれた
『お前、無事なのか!?』
リーバー・ウェンハム
私の好きな人
エクソシストである私を、初めて出会ったあの日から、ずっと変わらず人間として見てくれた人
私の特別な、ひと
そんな人と一緒だったから私は戦えた
自分の身を犠牲にしても、盾になって守ろうと思えた
「た…ぶん…?…AKUMAは…倒し、た」
喋る度に声は掠れて、ひゅーひゅーと空気の漏れる音が耳の奥に響く
「ファイ…ダー…守れ、なか……ごめ、なさ…」
『っ…』
向こう側のリーバーの声が、切なそうな震える声に変わる
あ、やだな…そんな声させたい訳じゃないのに
きっとリーバー、悲しい顔してる
仲間が死んだ時の、あの痛みに耐えるような
そんな顔をしてる
傍に行きたい
私が支えてあげたいのに