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科学班の恋【D.Gray-man】

第82章 誰が為に鐘は鳴る



「ラビの言う通りだ」



声を荒げることなく、しかし低い声で賛同したのはリーバーだった。



「ハスキン達が望むのは、南のあんな姿じゃない。それは南自身もわかってるはずだ」



何年も、命を賭した職場で共に生きてきたのだ。
それくらい理解のできない子供ではない。
それでも南が声を詰まらせながら嘆くのは、恐らく彼女の弱い心に突け込んだ者がいるからだ。

南の仲間を思う心を利用し、追い詰めている。
その様にはラビ同様、ふつふつと怒りが湧いた。



「言え、南。お前にそんなことを言わせてるのは誰だ」

「…っ」



問い掛けるも、項垂れた頭は横に微かに振り被るばかり。
言えないのか、言わないのか。
気付けば足は前に踏み出していた。



「はんちょ、実力行使は───」

「わかってる。"上司"として話しに行くだけだ。ラビは周りを見張っててくれ」



びゅうびゅうと強風が舞う中、辿り着いた城壁の柵。
近くで見ると、よく立っていられるものだと思う程、南の顔色は薄く悪いものだった。
唇を噛み締める。



「っ…しっかりしろ!」



リーバーの口から飛び出したのは、職場で彼が怒号を上げる時のものと同じだった。



「南は俺の部下だ、そんな嘆くだけの奴を仲間に持った憶えはねぇぞ!」

「……ごめ…なさ───」

「謝るな!」



ぴしゃりと落ちるリーバーの声に、南のふらつく体が制止する。
厳しくしごかれもしてきた、職場でのリーバーのことを体が覚えているのだろうか。



「謝るからには責任を持て。本当に自分が悪いと思うなら頭を下げろ。そうじゃないなら、悪くもない謝罪なんかするなッ」

「…わ…わた、しは…」

「お前のその気持ちは本当にお前のもんなのか?あいつらの死は、間違いなく自分の所為だって言い切れるのか」

「っ…」



カタカタと六幻が震えを増す。
振動が大きくなるにつれ南の掌を裂く力も増す。
手首を伝う血の色が濃くなるのを見て、リーバーは思わず城壁の柵を掴んだ。
南と同様、城壁の上に上がり六幻を握り締めている手首を掴む。



「南ッ!」



ぴくりと、項垂れていた南の顔が反応した。

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