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科学班の恋【D.Gray-man】

第82章 誰が為に鐘は鳴る



「なんで六幻なんか握ってんだ。離せ南ッ」



強い口調で止めるリーバーに、しかし南は首を横に振るばかり。
震えながらも六幻を離そうとしない。



「自分の体を傷付けるようなことするな!」

「…って…」

「?」

「だって、離れないんですー!」

「………は?」

「勝手に手が刃に引っ付いて…!い、ぃいぃ痛いですはんちょ…!」

「…は?」



開いた口が塞がらない、とはこのこと。
唖然と棒立ちになるリーバーに、南は泣き言を飛ばした。



「体は言うこと聞かないし、六幻は勝手に光り出すし…!また六幻壊したら今度こそクビです私ー!」

「お、落ち着け南。それくらいでクビになんかしないから」

「どうやら頭を乗っ取られでばいないようだな…あの刀のお陰だ」

「…そーか…」

「なんだ、二人して。何がそうかなんだラビっ」

「六幻は一度南をゾンビから守ったことがあるんさ。理由はわかんねぇけど、恐らく南の危機に応呼してる」

「あの刀が、女を現実に繋いでいるんだ」



悟ったように頷くラビと共に、リーバーの腹から顔を出した亡霊が頷く。

同じイノセンスに適応した体だからこそわかる。
六幻はラビのイノセンスではなかったが、鉄槌と共鳴し合った時の予感とそれは似ていた。
彼女に血を流させ、痛みを与えているのは六幻自身の力だろう。
そのお陰で南の痕跡を見つけ、こうして見つけ出すことができた。



「さっすが、ユウのイノセンスさ。やり方は手荒だけど頼りになる」



すぐ暴力に訴える乱暴者だが、いざという時は心強い味方となる、なんとも主に似たイノセンスだ。
だが安全とは言い難い南の状況に、ラビはホルスターから鉄槌を抜くとすぐさま巨大化させ発動した。



「何があったか知んねぇけど其処から動くなよ、南。すぐそっちに行くから───」

「……だめ」

「何言って」

「来ないで…来たら、だめ」



泣き言を飛ばしていた南の顔が歪む。
カタカタと六幻を握る手が震えた。
否、それは六幻自身の震えだった。



「私、一人じゃないの」



何を言っているのか。
南の言葉の意味は、すぐに答えとなって現れた。

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