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科学班の恋【D.Gray-man】

第82章 誰が為に鐘は鳴る



「そんな訳ないだろ」

「証明できることは何もねぇだろ?オレだって認めたくねぇけど、あの時死んだ仲間の浮かばれない魂」

「そんな訳ねぇだろ!」



信じたくない気持ちはラビも同じだ。
しかしリーバーの心は更に確固たるものだったらしい。



「じゃあなんだ。ラビは、あの時仲間を失った辛さを抱える南の心に取り憑いて、同じ苦しみをまた味わわせようとしてる奴がいるって言うのか?そんな奴が俺達の仲間にいたとでも思ってんのか」

「…それは…」

「そんな奴いない。皆命を賭してる職場とわかって働いてるんだ。そんな情けない奴は、少なくとも俺の部下にはいるはずがない」

「……わかってんさ。悪ィ、言い過ぎた」



項垂れ床へと落ちるラビの視線は、リーバーと交差しない。
亡霊がリーバーの心を強いと言った理由を、漠然とだがラビは理解できた気がした。
同時に自分の心の弱さも思い知る。
科学班班長とブックマンJr.。
立場が違うと言えばそこまでだが、それはただの言い訳だ。
感情的になる時もあるが、時には他人事のように身を退き物事を見る癖がラビにはある。
それが悪いことだとは誰も非難しないだろう。
だからこそラビ自身で詰ってしまうのだ。



「…いや、俺も言い方が悪かった。すまん」

「はんちょは悪くねぇさ。当たり前のことを言っただけだろ」

「お前だってそうだろ。その可能性は、確かになくはない。…俺が認めたくないだけだ」



予想したくもないが、本当に南が取り憑かれてしまったのならば。
その心に突け込めたのは、彼女の心を無防備にする相手だったのかもしれない。
南の他人への優しさは知っていたが、同時に芯の強さもリーバーは知っていた。
そんな南の心に取り入れる相手となれば、心許した者しかいない。

もしかしたら、それは、彼女の身近にいた者なのかもしれない。



(…今ここで答えなんて出ねぇか)



思考を無理矢理に断ち切る。
死後の世界など、生きている者がどんなに考えてもわからないことだ。



「ラビのそういう冷静な判断は、戦場(ここ)では強い武器になる。あんまり自分を責めるなよ?」



一呼吸置いて、僅かに苦笑混じりに肯定する。
しかしそんなリーバーに対して、ラビの表情は違っていた。
筋肉が強ばり、何かを凝視している。

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