第82章 誰が為に鐘は鳴る
「はんちょ、銃だ」
「?」
「南に危険を知らせねぇと…一箇所にとどまってる方が危ないさ。あの場から逃げさせねぇと」
「! そうか…っ」
最悪の場合、銃声を3発鳴らすことで南にその場から逃げ出すよう指示はしてある。
なるべく避けたかった合図だが、そうも言っていられない。
急いでホルスターから抜いた銃の安全装置を外すと、リーバーは天井へと向けた。
銃声で新たなゾンビが寄ってくる可能性はあるが、そんなことは二の次だ。
優先すべきは南の命。
職業柄、幽霊や霊魂の存在は信じているし、その者達の持つ怨み辛みがどれ程の力を成すのかも知っている。
下手すれば生きた人間すら殺すこともできるものだ。
心身共に疲労している南が襲われれば、ひとたまりもないだろう。
「耳を塞げラビ…!」
ガァン!ガァン!ガァン!
間髪入れず天井に撃ち込まれる銃弾。
その音は振動と共に、ゾンビの消えた静かな教団内に響き渡った。