第82章 誰が為に鐘は鳴る
「なーんかさー…その音聞くと寒気するって言うか…嫌な感じがするって言うか」
「そりゃあお前が心霊系苦手だからだろ…」
「うっせ!確かにそうかもしんねーけど、南だって怖がってたかんな!」
呆れ顔のリーバーに、むっとラビの顔が膨れっ面になる。
苦手なことは認めているが、それで馬鹿にされるのは不服だ。
誰しも苦手なものはある、致し方ないことだろう。
「ずーっとその音が付き纏ってくるって」
「そうなのか?」
「そーさ。オレはわかんなかったけど、南の耳はウサ耳化してたし。人じゃ拾えない音も聴いてたんだろ」
「………」
そう言ってラビが指差す亡霊に、しかし彼女の唇は固く結ばれていた。
強く結んで、への字に曲げる。
納得のいかない顔のようだ。
「オレと合流する前から聞いてたって言ってたし。案外ずっと近くにいたんじゃね?」
「…いづだ」
「いつって。だから、南以外の団員全員ゾンビ化した時から」
「わだじは、その時がらずっとリーバーの体に取り憑いでいだ」
「? だからなんさ」
「ずっと体内に潜り込んでいだんだ。リーバーの体から顔を出したのは、お前達が二人揃っている所を見つけたあの時だ」
「あー…つまり?」
少女の言葉は核心が掴めない。
結論を促すリーバーに、少女はぐぷりと濁った音を漏らした。
排水溝を詰まらせたような、しかし聞いたことのないような寒気がする音を。
「その女が聞いていだ音は、私の声じゃない」
「…へ?」
「…は?」
思いもかけない亡霊の言葉に、二人して言葉が詰まる。
と、いうことはつまり。
「別の誰がの声だ」