• テキストサイズ

科学班の恋【D.Gray-man】

第82章 誰が為に鐘は鳴る



✣ ✣ ✣ ✣



「イデッ!痛いはんちょ!それ痛いってもっと優しく!」

「これくらい我慢しろ。早く戻らなきゃなんねぇだろ」

「それはそうだけど…あだだ!だ、大丈夫だって!大方のゾンビは始末したから、南への危険も薄れてるさ!」

「だからって危険がないとは言い切れないだろうが。大体、ずっと不安を抱えたまま南を待たせるなんて、お前も嫌じゃないのか」

「っ…それは…まぁ、」



負傷した腕やら足やらにリーバーが荒い応急処置をこなしていく中、ラビは口を噤ませると目の前の衣類を手に取った。



「…わかったさ。クロちゃんの血は採取できたし、後は南と合流して科学班のラボに向かえばいいんだろ?」

「ああ。機械が揃っていればすぐにワクチンは作れる」

「後は厄介なユウや元帥達を優先にウイルスを完治させていけば…」

「この一件は収束できる」

「はぁ…やっとここまできたさ〜」



リーバーが用意した大人サイズの衣類へと着替えながら、ラビの口から大きな溜息が漏れた。
ここまで来るのに随分と長い道のりだったように思う。
やっと見えた一筋の確かな希望の光。

此処は第一広場から然程離れていない、未使用の空き部屋。
一時避難しながら僅かな休息も取る間、亡霊の少女はじっとドアを見つめていた。



「どうだ、新手のゾンビは現れそうか?」

「…いや…気配はない。どうやらさっぎの攻撃で、ほとんど一網打尽にできだらじいな」

「だろっ?オレのお陰さ♪」

「だからって無茶し過ぎだ。あのソカロ元帥相手に逃げ出さないなんて、一歩間違えればお陀仏だぞ」

「イテッ」



ふふんと胸を張るラビの頭を、呆れ顔のリーバーがぺしんと軽めに叩く。
ラビの両腕が失われれば、エクソシストとしての道を絶たれるだけではない。
無事に戻って来てと懇願していた南の思いを、踏み躙ることになる。



「全く…南に自分を第一に考えろって言われただろ」

「はんちょには言われたくないさ」

「俺は無闇に体を張ってないぞ」

「クロちゃんへの決め手に欠けてただろ。自分第一なら、あそこで迷ったりしないさ」

「………」

「どっぢもどっぢだ、お前達は」



ラビの意見にリーバーが反論できずにいれば、盛大な溜息がその場に響き渡った。
亡霊の少女だ。

/ 1387ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp