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科学班の恋【D.Gray-man】

第82章 誰が為に鐘は鳴る



「はーんちょー」

「!」



まじまじと赤毛を見下ろしていれば、上へと向いた視線と目が合う。



「これで作戦成功、さ?」



へらりと気が抜けるような顔で笑うのは、いつものラビだ。
彼はいつもそう。
人当たりの良い顔で、人懐っこい性格で、臨機応変に態度を変えることができる。
子供のように遊び心を持ち、大人顔負けの記憶力と分析能力に秀でている。
しかしブックマン一族である身故か、自身が持つ能力をひけらかすことはしない。
その緩い笑顔の下には、どんな力が隠されているのか。



「………(同年代組で一番末恐ろしいのは、ラビかもしれないな…)」

「はんちょー?矢は回収できたんだろ?」

「! あ、ああ!」



再度問われ、慌てて頷く。
リーバーの応対にやっと確信を持てたのか、安心しきった顔でドサリとラビはその場に体を横たわらせた。



「ラビ…!?」

「はは…あー、疲れた…ちょっくら休憩させて」

「大丈夫かっ?」

「だいじょぶさ、ゾンビは全員外の中庭に落っことしてやったから。この嵐じゃあ、すぐには中に戻って来れねーだろ」

「(そういう意味じゃなくて!)馬鹿、お前の体だっ」



急いで階段を駆け下りながら心配するリーバーの声に、ラビは力の抜けた緩い笑顔を浮かべたまま。



「あー、そっち…まぁ、ぼちぼち…」



シャンデリアを失くした高い天井を見上げると、やがてその目を閉じた。



「これで、南の所に胸張って帰れるさ…」



今すぐにでも帰路に着きたいが、とりあえず今は、すぐには動かせそうにない体に一時休息といこうか。

解決への道は、拓けたのだから。






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