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科学班の恋【D.Gray-man】

第82章 誰が為に鐘は鳴る



ラビの鉄槌の周りでとぐろを巻く大蛇は、見慣れた火判の大蛇ではなかった。
幾重も重なり合う頭を、のそりと持ち上げる。
普段の火蛇より遥かに巨大な、複数の頭を持つ大蛇。
それはまるで空想上の神龍である八岐大蛇のように。

分厚い鱗を纏う半透明の体内には、食らったゾンビ達が犇めき合っている。
彼らを糧にするかのように、大蛇は一斉に牙を向き咆哮を上げた。
それは声ではなかった。
雷雨強風、自然の脅威が轟音を響かせる。



「なんだそいつはァ…!」



イノセンスの力というよりも、強大な自然の力を前にしているかのような錯覚。
ソカロの足が止まる。



「なんでもねぇさ。外の嵐の形を別モンに変えただけ。…ただし、」



冷静な声のまま、ラビがゆらりと鉄槌を後方へ撓らせる。



「ゾンビのオマケ付きでな!」



それを振るうと同時に、幾重もの大蛇の頭は牙を剥いた。
一匹の頭でも、裕に人間を十人は食らい尽くせそうな程の大きさだ。
逃げることはせず、イノセンスを構えるソカロに大蛇の頭が一斉に襲い掛かった。



「うおおおおおお!?!!!」



相手はただの大蛇ではない、嵐が具現化し尚且つイノセンスの力を得たもの。
それを元帥であろうとも、ソカロ一人の力で捩じ伏せることはできなかったらしい。
踏ん張っていた足元の床が割れたかと思えば、体は吹き飛ばされ割れた硝子の向こう側へと追い出された。
大洪水のように、体をうねらせ教団の外へと飛び出していく八岐大蛇。
体内に食らったゾンビを引き連れて。



「………終わった…のか?」



残ったのは、竜巻が去った跡のように散々崩壊した広場と、その中心に立つエクソシスト。
リーバーが恐る恐る屈めていた身を起こす。



「あいつ…」



アレンはノアの方舟での戦いで、臨界点を突破し元帥と同等の力を得た。
リナリーはその後の本部襲撃で、初の結晶型という新しいイノセンスの力を得た。
神田もまた、ヘブラスカとの同調時に成果を出してはいないが、戦闘で充分に二人と同等の力を持っていると見られている。

そして、ラビ。



「一番腹の底を見せない奴だと思ってたが…あんな力を持っていたとは…」



彼も、もしかしたら。
その実力は元帥に迫るものなのかもしれない。

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