第82章 誰が為に鐘は鳴る

「アレン…まさかお前、意思が…？」



ティムとは長年連れ添った身だろう、そこに確かな絆があったのかもしれない。
ウイルスにも侵されない、心の絆が。
そうリーバーの中に一つの希望が生まれようとした。



「アレン！お前も───」

「ガァアア！」

「…は？」



しかし呼び掛けに応えたのは激しい唸り声。
今の今まで牙を剥き出さなかったアレンが、鬼のような形相で迫ったのは───ティムキャンピー。



「っ…な、なんだッ！？おい待てアレン！」

「ガルルル…！」

「お前ッ意識が戻ったんじゃなかったのかよ！？」



最上階にいるにも関わらず、ティムキャンピーを追い天井へと飛び出そうとするアレン。
を、寸でのところでリーバーが羽交い締めに止める。



「今のお前が飛び出したら真っ逆さまに落ちるだけだ…！」

「無駄だ、ごいつはあのゴーレムじか見えていない」

「だからって無視できるか！落ち着けってアレン！」

「ガルァアア！」

「どんだけティム好きなんだよ！」



果たしてそれはティムへの愛なのか。
しかしウイルスの威力を止める程には至らなかったらしい。
恐るべし、コムイの力である。



「く、そ…！ティム！矢を回収したら逃げろ！こっちに来たらアレンに食われる！」



後ろから羽交い締めにしているものの、理性を失ったエクソシスト相手に止めることなど無理に等しい。
ずりずりと少しずつだが前進するアレンに、このままでは二人共々落下してしまう。
アレンの目先からティムキャンピーの存在を無くそうとリーバーが呼び掛けると、矢を口に咥えたゴーレムが振り返った。

途端に、ボンッ！と煙を立てて破裂したのだ。



「なッ…！？」



ティムキャンピーの体が。



「ティム…！？」



アレンが何かしたようには思えない。
新たな敵でも現れたのか。
咄嗟に視線を巡らせるリーバーに、それらしい人影は見つからなかった。



「おいティム！何が───」



ボンッ！と鳴り響く二発目の爆破。
今度は目の前の押さえ付けたアレンの頭から。



「！？　い、一体何が起こってるんだ…！？」



相手は無差別に攻撃をしているのか。
力を失くすアレンの体を咄嗟に支え、必死に捜すもやはりリーバーの目では、敵らしい人物を見つけられなかった。
一体何処から狙われているのか。