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科学班の恋【D.Gray-man】

第82章 誰が為に鐘は鳴る



突っ込むリーバーに対して、アレンは無防備だった。
ただ突っ立っているだけの体に、いとも簡単にどふりとリーバーの拳が腹部に叩き込まれた。



(やった、か…!?)



ふらりと揺れるアレンの体に、罪悪感を持ちつつも勝機を見出す。
しかしふらりと揺れた体は、ふらりとした足で支えられた。



「グルル…」



リーバーの拳を無防備に受けながらも、一切苦しむ様子は見せない。
痛みを感じていないかのように、アレンもまた布手袋をした手をぐっと握った。

ドン!と重い拳がリーバーの脇腹に叩き込まれる。



「ぐぅ…ッ!」



充分な構えもしていない状況から繰り出された一打とはとても思えない、重い強打だった。
ミシミシと嫌な音を立てる骨に、リーバーの食い縛った口の端から苦痛の声が漏れる。



「ごいつは普通のエクソシスドじゃないんだぞ…!あの元帥と同じで厄介だ!」

「んな、こと知ってる…!」



ソカロと性格は真逆だが、実力は同じに臨界点突破組。
アレンが一筋縄ではいかない相手なことなど心得ていた。
が、今回は亡霊の少女が正論だったらしい。



「あ、ぐ…!?」

「グルルル…!」



歯を剥き出しに噛み付いてはこないが、アレンの手はリーバーの首を鷲掴むといとも簡単に持ち上げた。
足先が地面から離れそうになる感覚に、堪らずアレンの手に爪を立てる。
しかしそれは蚊の鳴く程度の抵抗でしかないらしい。



(く、そ…!これじゃ息が…!)



強制的に塞き止められる喉元の気道に、息が苦しくなる。
酸欠気味に目の前が霞んでいく光景に危機感を覚えた。
此処で意識を飛ばしてしまえば、ソカロの言うようにジ・エンドとなってしまう。



「や、ゃめ…ろ…アレ…っ」



どうにか息絶え絶えな声を発するも、締め付けは酷くなっていくばかり。
目の前の白い頭の少年の顔がぼやけ、焦点も合わなくなってくる。
いつ意識を飛ばしても可笑しくない状態で、ついにリーバーの手が力なくアレンの手元から滑り落ちた。



「おい…!リーバー…!」



焦りを覚える亡霊の、名を呼ぶ声を聞いた時。
キン、と。
ぼやける視界の奥で、光る何かを捉えた。



───ゴッ!



捉えたと思った瞬間、衝撃は目の前にあった。
鈍い打撃音がしたかと思えば、アレンの手がリーバーの首から離れる。

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